バセドウ病ってどんな病気?診断は?治療方法はどんなものがあるの? 〜3つの治療法の違いと選び方を解説〜
- 2025年6月25日
- 甲状腺
今回は、甲状腺の病気のなかでもよく知られている「バセドウ病」について、診断のポイントや治療方法を中心に詳しくご紹介します。
●バセドウ病とは?
バセドウ病は、自己免疫の異常によって甲状腺が過剰に働く病気です。 正確には、TSH(甲状腺刺激ホルモン)受容体に対する刺激型自己抗体(TRAb)が体内で作られることで、甲状腺が刺激され、甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が必要以上に分泌される状態です。
このような背景から、バセドウ病は「自己免疫性甲状腺機能亢進症」に分類されます。
👁 特に注意すべき点:甲状腺眼症の原因に
バセドウ病は、甲状腺眼症(眼球突出や眼の炎症・違和感など)の最も代表的な原因疾患でもあります。 眼症状がある場合は、内分泌専門医だけでなく眼科との連携が必要になることもあります。
●診断はどうやって行うの?
【臨床所見】
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甲状腺中毒症状:動悸、頻脈、体重減少、手のふるえ、暑がり・発汗増加、だるさなど
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びまん性甲状腺腫:首元が全体的に腫れてくる感覚(痛みはないことが多い)
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眼球突出や眼の違和感:目が出てきた、ゴロゴロ感、まぶたが開きづらいなど
【検査所見】
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FT3(遊離トリヨードサイロニン)およびFT4(遊離サイロキシン)が高値(正常範囲を超える)
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TSH(甲状腺刺激ホルモン)が低下(しばしば測定不能なほど)
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TRAb(甲状腺刺激ホルモン受容体抗体)またはTSAb(甲状腺刺激抗体)が陽性
シンチグラフィ検査で甲状腺全体にびまん性集積像が見られる、または放射性ヨウ素取り込み率の上昇
上記の所見より以下のように診断します。
【確実例】 臨床所見の1つ以上に加えて、検査所見の4つを認めるもの。(*シンチグラフィ検査が必要であり、大学病院レベルでないと困難)
【準確実例】 臨床所見の1つ以上に加えて、検査所見の1、2、3を有するもの。(*クリニックや地域の病院では、これで診断。)
【疑い例】 臨床所見の1つ以上に加えて、検査所見の1と2を有し、遊離T4、遊離T3高値が3ヶ月以上続くもの(*TRAb・TSAbが検査困難な場合)
診断がついてから、治療に移行していきます。(*一時的に甲状腺機能亢進症を認める、甲状腺炎という疾患もあるため、診断をしっかりつけてから行うべきと考えられています。)
● 治療方法は大きく3つあります
バセドウ病の治療には、以下の3つの選択肢があります。 患者さんの年齢や症状の程度、生活スタイル、将来の妊娠の希望なども考慮しながら、最も適した治療法を選んでいきます。
1. 抗甲状腺薬による内服治療(メルカゾールやプロパジール)💊
甲状腺ホルモンの産生を抑える薬を毎日服用する方法です。
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メリット:外来通院で治療可能。妊娠中・授乳中でも使用できる薬がある。
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デメリット:治療期間が2〜3年と長く、寛解率は50〜70%。副作用もあり。
主な副作用:
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肝機能障害:バセドウ病そのものでも肝機能異常は見られますが、抗甲状腺薬でも肝障害が起こることがあります。特にプロピルチオウラシル(PTU)ではリスクが高く、ASTやALTなどの肝酵素上昇や、黄疸、倦怠感、食欲低下などが出ることがあります。自覚症状が少ないため、定期的な血液検査が大切です。
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薬疹・かゆみ:最もよく見られる副作用です。服薬から数週間〜数か月で、かゆみや湿疹、蕁麻疹が出ることがあります。軽症なら外用薬で対応可能ですが、強い症状が出た場合は薬の中止や変更が必要になります。
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無顆粒球症(頻度:500〜1000人に1人):白血球(好中球)が急激に減少し、免疫力が低下します。高熱、のどの痛み、だるさなどが初期症状です。風邪のような症状が出たらすぐに薬を止めて受診してください。発症は開始後2〜3か月以内に多く見られます。
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その他:再生不良性貧血、低血糖、ANCA関連血管炎など
2. 手術療法(甲状腺全摘出術)
甲状腺を外科的に切除する方法です。
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メリット:短期間で治療が完結し、確実な寛解が得られる
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デメリット:入院・手術が必要。まれに声帯や副甲状腺への影響がある
3. 放射性ヨウ素内服療法(アイソトープ治療)
放射性ヨウ素を内服し、過剰に働いている甲状腺細胞を選択的に破壊する方法です。
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メリット:外来で実施可能。永久的な寛解が得られる確率が高い
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デメリット:妊娠・授乳は一定期間避ける必要あり。晩発性の甲状腺機能低下症を起こすことがある
📝 まとめ
バセドウ病の治療は、内服・手術・放射性ヨウ素の3つの方法から選択されます。 それぞれにメリット・デメリットがありますので、患者さんの生活スタイルや将来の計画をふまえて治療方針を一緒に考えていきます。
不安なことや疑問点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。当院では、患者さん一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせ、治療法の選択を丁寧にサポートしています。
*引用
本記事は日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024(2024年11月21日改定)」に基づいて作成されています。
https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html#basedou