睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(以下、SAS:Sleep Apnea Syndrome)は寝ている間に一時的に呼吸が弱くなったり、止まったりすることで、全身が酸素不足となる病気です。SASの大半は「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」という、鼻から喉にかけての気道狭窄があるタイプです。日中の強い眠気や倦怠感を生じ、放置すると高血圧や狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを合併することがあり、突然死する場合もあります。できるだけ早く診断し、治療を始めることが大切です。
上気道(鼻から喉頭にかけて)の狭窄があります。狭い気道を空気が通ることで“いびき”が生じます。主な原因は肥満による首や喉まわりの脂肪沈着です。また、顎の変形や扁桃肥大、巨大舌、加齢による筋肉の衰えや睡眠薬、アルコールも一因となります。男性は30~60代によくみられ、女性は更年期以降に多く、閉経によるホルモンバランスの変化も関与すると考えられています。
※日本人患者(約2200万人)の4割は非肥満、5割は日中の眠気を感じていないと報告されています。
一方でほとんどの方は「いびき」を指摘されており、主症状といえます。
高血圧、心筋梗塞や心不全、脳卒中、糖尿病や脂質異常症などの発症と増悪にSASが関連することが示されており、適切に治療をすることで予後の改善が期待できます。また、2型糖尿病患者さんの4~8割はSASを合併することが近年報告されており、一般成人のSAS合併率(男性:2~3割、女性:1割)と比べると、極めて高いものです。こうした疾患の発症および進行を抑えて健康寿命を維持・増進するためにも、SASの簡易検査をお勧めいたします。不安な症状がある方は、お気軽にご相談ください。
SASかどうかを簡単に調べる方法の一つとして、STOP-Bang質問紙法(表1)があります。2点までなら9割の確率でSASは否定的ですが、3点以上は陽性となり、次の検査に進む必要があります。
表1 STOP-Bang質問紙法
Snoring(いびき) | 大きないびきをかきますか? |
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Tired(疲労) | 疲労、倦怠感、日中の眠気を感じますか? |
Observed(他者の目撃) | 他の人から呼吸停止や窒息、あえぎを指摘されましたか? |
Pressure(血圧) | 高血圧がある、または治療中ですか? |
Body mass index(BMI) | BMIが35以上ですか? |
Age(年齢) | 50歳以上ですか? |
Neck size(首回り) | 首回りが40㎝以上ですか? |
Gender(性別) | 男性ですか? |
合計8点(3点以上で陽性)
STOP-Bang質問紙法で陽性の場合、ご自宅でできる簡易睡眠検査と、専門の医療機関に一泊して行う精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)があります。精度の面では精密検査が優れていますが手間とコストが掛かるため、重症あるいは中等度の睡眠時無呼吸症候群の診断には簡易睡眠検査を代わりに用いることが推奨されています。簡易睡眠検査は手指や鼻にセンサーをつけて、睡眠中の呼吸を調べます。当院で検査予約していただくと、業者から自宅に機器が郵送され、検査後に郵送で返却します。次回受診時に、当院で結果を説明させていただきます。
CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)が代表的ですが、他にマウスピース療法、減量、手術などがあり、症状の程度や原因に応じて選択します。
CPAP療法は中等度から重症度に有効な治療法です。睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を開存させて治療します。睡眠中の無呼吸・いびきが減少し、眠気の改善や血圧を下げる効果も期待できます。
CPAPのマスクをつけると不快で眠れない、いつの間にか外しているなどの理由でCPAP療法を続けられない方は、マウスピース療法も可能です。睡眠時にマウスピースを装着し、上気道を広く保ち、無呼吸やいびきの発生を防ぎます。作成する場合はSAS治療専用マウスピースを作成している歯科医師を紹介させていただきます。
原因が肥満の場合は減量が根治療法になりますので、CPAPやマウスピース療法と組み合わせて治療を行いながら、肥満改善の指導を行っていきます。また、顎の変形や扁桃肥大などが原因の場合は手術が必要になる場合もあり、連携する医療機関にご紹介いたします。鼻や喉に元々疾患がある場合、マウスピースやCPAP療法で十分な効果が得られないことがあります。このような場合も手術が検討されます。
このほかに、口呼吸の予防・治療に有効な口腔筋機能療法や、寝る向きを矯正する体位療法などが有効なこともあります。